藤吉郎さんはバレンタインデーの4日後にうまい棒をもらって喜ぶ
ichirou

「温かいですね」

いや〜面と向かって言われると照れますな〜

「このエコバッグとっても温かいです」

「え?」

「ずっとレジ打ちしてると手がかじかんで…」

なんだエコバッグか
でもなんで温かいんだろ?

店員さんは器用に精算用のカゴに私のエコバッグを装着しながら
うれしそうだ

「お客さんがジャンパーの中にしまってくれてたから温かくなってたんですね。まるで秀吉さんみたい……すみません。よけいなことを」

秀吉さん? 
わたしゃ まだまだ藤吉郎ですよ 店員さん


「ありがとうございます。2,480円になります……これ、よろしかったらどうぞ。」

店員さんは制服のポケットからうまい棒をひとつ取り出し
私のエコバッグに入れてくれた

私はとっさにうまい棒を握った

「私のポケットの中は温かくないですよ。
 本当に 今日も冷えますね。」


出世が遅すぎて中年になった藤吉郎さんは
口からうまい棒の粉をパフパフ吐きながら
夜空に向かってつぶやいた

「まだまだ秀吉さんにはなれないな〜」











自由詩 藤吉郎さんはバレンタインデーの4日後にうまい棒をもらって喜ぶ Copyright ichirou 2014-02-18 22:42:41
notebook Home