藤吉郎さんはバレンタインデーの4日後にうまい棒をもらって喜ぶ
ichirou
「温かいですね」
いや〜面と向かって言われると照れますな〜
「このエコバッグとっても温かいです」
「え?」
「ずっとレジ打ちしてると手がかじかんで…」
なんだエコバッグか
でもなんで温かいんだろ?
店員さんは器用に精算用のカゴに私のエコバッグを装着しながら
うれしそうだ
「お客さんがジャンパーの中にしまってくれてたから温かくなってたんですね。まるで秀吉さんみたい……すみません。よけいなことを」
秀吉さん?
わたしゃ まだまだ藤吉郎ですよ 店員さん
「ありがとうございます。2,480円になります……これ、よろしかったらどうぞ。」
店員さんは制服のポケットからうまい棒をひとつ取り出し
私のエコバッグに入れてくれた
私はとっさにうまい棒を握った
「私のポケットの中は温かくないですよ。
本当に 今日も冷えますね。」
出世が遅すぎて中年になった藤吉郎さんは
口からうまい棒の粉をパフパフ吐きながら
夜空に向かってつぶやいた
「まだまだ秀吉さんにはなれないな〜」