世界の蝶番は音もなくゆるやかに動いて
佐々宝砂

世界が裏返るとき
世界のどこかで蝶番がきしむだろうか

それとも
世界は一瞬のうちに裏返るだろうか
ほんのわずかな音も立てないで

たまに飲むビールは
いつもの発泡酒と違ってちょっとだけ甘い
あくまでもちょっとだけ
世界は今日も基本的には苦くてちょっとだけ甘い

ちょっとだけだなんて
あまりにもつまんなさすぎるよな。

強風吹きすさび
砂塵が空を茶色に染めても
世界は裏返ろうとしない

わたしひとりが
あっちの側に突き抜けることさえ
簡単にはできない

それでも
わたしは確かに
世界の裏返し方を知っていて

自らの内臓をさらけだし
その臭い内容物をさらけだし
やわらかな皮膚の裏側を
したたる血とともにさらけだし

そうすることによって
すくなくとも
わたしの世界は裏返る
世界の蝶番は音もなくゆるやかに動いて

くるん。


自由詩 世界の蝶番は音もなくゆるやかに動いて Copyright 佐々宝砂 2014-02-16 23:11:02
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