わた し は ねこ だ
な まえは ま だ ない
殺伐とした空気が支配する部屋で、
きみは子猫に名前を付けようとしている。
子猫が産まれてからもう三日が経った。
わた し の ほかに も きょうだいが
い た は ずだが き がつくと
わ たしひと り に なってい た
四匹産まれたが、産み落とされた時すでに一匹は死んでいて、
その日の夜に二匹目が死に、翌日の昼に三匹目が死んだ。
にんげ ん が のぞ きこ んでいる
わたし は ねむ ってい るが
そ の けはい をかんじるこ とは で きる
残った最後の一匹が
タオルを敷いたダンボールの隅で、
丸くなって眠るのを眺めながら
きみはずっと、その子猫の名前を考え続けている。
に んげ ん は すこ し ほほえ んで い る
その りゆ うは わか ら ない
母猫は二日目の朝に出ていったままだ。
たぶん、もう帰ってこない。そんな確信がある。
ここ は あ たた かい
そして さつばつ と し ている
どのみち、明日にはおれたちも
この部屋を出ていかなくてはならない。
子猫の名前よりも、
明日の夜をどこでどうすごすかを決めるのが先だ。
わ たし は ねむ りにおち ていく
この ま ま めざめな い か もしれ ない
なのに、そんなことはお構いなしに
この殺伐とした空気が支配する部屋で、
きみはずっと、子猫の名前を考え続けている。
わた し は ねこ だ
な まえは ま だ ない