さよなら
藤原絵理子
街は華やいだイルミネーションが踊ってる
コートの襟をたてた一瞬
あたしのぬくもりのなかに
あなたの香りが溶けているのを確かめる
意地悪な冷たい風が
言わせるセリフ
「あなたじゃなきゃ だめなの…」
通り過ぎるヘッドライトに振り返る
あなたには
帰っていく場所がある
あたたかく迎えてくれる明かりがある
壊したくても壊せない大切なもの
みぞれ混じりの雨が髪をぬらす
ついさっきまで
あなたの指にからんでいたのに
今はもうひとりで生きてるふりをしている
強がりのさよなら
振り向きもせずにドアをあけて
あなたの言葉が追いかけてきてくれるのを
一瞬待ったあたしがいとおしくて
雪に変わった雨は
街を静けさで包む
あたしの足音は
響くこともなく吸い込まれた