朝のキャンバス
ヒヤシンス
朝の心地良い風が優しく吹き込んでくる窓辺にほんの少し黄ばんだキャンバスを置く。
そこに描かれた幾重にも塗りたくられた意識の高揚をじっと見つめる。
その高揚の中には、自信と自惚れ、嫉妬と蔑み、夢と希望、絶望と破壊があった。
それは何より、私には選ぶ権利があったということを意味していた。
私が意識を自由に選択してそのキャンバスに色彩の花を咲かせていた頃でも、
あなたは世界のどこかを旅していて、時折寄越す手紙に機微を染み込ませてきた。
それは私を動揺させ、鈍感で曖昧な色を使うことを拒み、また許さなかった。
奇しくも今部屋を満たしているのは、完璧無比なバッハのカンタータだった。
私が敬い、畏れ、感嘆すべき奇跡の人は、決して己の理を踏み外さない。
驚くべき才の目で己の世界と外界とを融合させる。
知らずして私はあなたの手紙からそういう人やその他の物からそれを得ているのか。
迷うことは無い。晴れ渡った朝こそその感知の時ではないか。
冷たく清い朝の風に、我がキャンバスの黄ばみは取れて、次に描かれるべきを待つ。
私は過去の上に描く。我が心の感知した全ての肯定的感情、思想を。