地の星
壮佑
影は次々と
落ちてきて
重なって
離れて
あおい時間も
ふじいろの空間も
あなたの指で
押し広げられて
そんなふうにして
世界はできあがり
あなたが残した
古い写真の
風景のように
どこか遠いところで
うすく結像する
地平線の向こうに
昇ってゆく
痩せた月まで
湾曲しながら続く
舗道を一歩
また一歩 と
踏みしめながら
吐く息は
塩のように白い
ぼくの声は
どこまで届くのだろう
ぼくの声は
すぐに消えるのだろう
そして遠い未来に
知らない惑星の上で
息を吹き返し
真空の中を
空想画の岩山に
ぶつかっては
墜ちて行くに違いない
敷石を踏む
ぼくの靴の下で
眠っている
地の星たちよ
さあ 静かに
眼を覚ませ
そしてこの街を飾れ
クリスマスの樅の木の
イルミネーションのように
遠くで誰かが歌っている
この街ではみんな
赤い靴を履きなさい
歩道から建物へ
建物から階段へ
階段から橋へ
きみのもとへ
遠ざかる靴
近づく靴
昇る靴
降りる靴
斜めに横切る靴
踵を返す靴
目覚めてゆく地の星
そんな映像が
夢の中の
あなたの横顔とともに
一瞬のあいだ閃く
濃紺の天空から
ひそやかな笑みを漏らしながら
決して聴こえることのない音たちが
雪になって舞い降りてくる
彼らと一緒に
街を飾る地の星たちが
螺旋を描いて踊り出さないよう
管理すること
それがぼくの仕事だ