数え切れぬ孤独
ハァモニィベル
奇妙な夢だろうか
<孤独>がネット・オークションに出ていた
存外たくさん出ていたから 驚いた
街に出ればすぐ手に入るだろうに・・・そう思い
電車だって孤独のスシ詰め状態だ・・・そう思い
なのに、
<孤独>がいくつもオークションに出ていた
出品者ごとに様々な効能をうたう
たとえば、曰く、
<孤独>
防衛機能あり。孤独とは防衛なり。
フロイト氏のその出品は落札されたが
すぐに、
落札者のこんな評価
ぶ厚いオーバーコートのはずなのに、
着こむほど凍えそうじゃないですか!
同じ出品ばかりが、たくさんあった
例えばこの
ひとり、部屋で留守番する少年の
画像がポツリと貼られた、
<テレビを見るという孤独>。
あるいはこの
ひとり、アパートで横たわる老人の死骸の
画像をひっそりと省略した、
<気づかれぬという孤独>。
・・・・・・・・・
近年増加中の出品がまた目を蔽う。
「孤独力」と名付けた出品が、救いあり気に立ち並び
今、さかんに入札されている様子
落札者からの評価はまだない
おそらくきっと、
マスクをつけた人々のように、街に<孤独力>をつけた人々が
ぽつぽつだんだんふえて行くだろう
こんなに盛んに出品/入札されてるのだから
<友情>は無視されたまま。
友情とは
奇妙な夢だろうか