きみはハズレ
ユッカ
声を聞きたくないときにかぎって電話は鳴る。
どうやらきみは、わたしをカウンセラーか何かと勘違いしていて、
一心につくせば必ず、労働に見合った甘いお菓子をくれるとでも思っているようだ。
そんなわかりやすい話がここにあるわけないでしょう。
就職するために顔をつくりかえるような世の中だ。
数分で考えたメールごときで、凝り固まった人の心を動かせると思っちゃダメだよ。
未来のことは星占いではわからない。
それでもわたしたちは血液型占いの本を買うし、
朝には天気予報を見て、その日の予定を考える。
A型は真面目だとか、
今日の天気は雨ですとか、
信条は一日一善ですとか、
愛すれば愛されるとか、
信じれば救われるとか、
全部可愛い占いみたいなものだ。
ロマンチックで儚い願かけ。
そんな確証のないことは何ひとついらない。
中身の無いメールなどしていないで、約束のひとつでも考えたらどうだ。
実はあなた達からもらった何もかも、
高いワインも可愛い服もすばらしいレストランの予約も何もかも、
大ハズレのバカ占いだったので。
もしも本当にアタリがほしいと思うなら、
占いなんてやめて逢いにきて。
いっしょに並んで歩いて、たまには排水溝にはまってもいい。
もしも願いを叶えてくれたら、
もう何もかも手遅れではあるけれど、
たとえばあの日見た紫にけぶるすばらしい夕焼けのような、
世界の秘密をひとつだけきみに教えてあげる。