仮宿
大村 浩一
娘の家が
我が家の居間に出来た
中国製のコート段ボールの切妻の家
白い壁にはクレヨンで好きな絵を描いた
飾りだが煙突もある
塞がっているから狼は入れない
ひょうたんライトを灯せば中は別世界
ご満悦の娘は扉からTVを見ている
この家もこの居間も
十年後には残らない
娘が 引っ越したくないと言う
会社借り上げのアパート
ほんとうの実家は北西2キロのぼろ家
母が戻れなくなって一年半
取り壊しと売却を日曜日に決めてきた
1984年の詩誌もビックリハウスも
処分しなければならない
月曜の朝 南沼上の清掃工場へ
段ボール4箱の瀬戸物を持ち込んだ
パッカー車で噛み砕かれる音を
背いて聞いていた
2014年2月3日・記 大村浩一