砂の城
千波 一也


砂の城は
潮風にだけ開かれている

砂の城は
形あるものを招きはしない

そのことに
気づいたものたちは
ゆっくり砂へと戻りはじめる

そして
それらの隙間へ
およぶ視線たちも同様に
ゆっくり砂へと戻りはじめる


砂の城は
空洞だらけの構造だから
なにものも閉じ込めたりはしない

それなのに
出口を求めるものたちが
いつの間にか、ある


生まれつきの砂などない

たったひとつのその真実が
孤独の層を
悲哀の層を
築きあげてゆく

崩れることを繰り返しながら
築きあげてゆく








自由詩 砂の城 Copyright 千波 一也 2014-02-05 15:46:00
notebook Home 戻る