【ミセス M】詩サークル「群青」の一月のお題「霧」への提出作品
そらの珊瑚
昨晩
ひとつの恋を失った
ミセス ミスティは
男の不実を責めるでもなく
ピアノの蓋を閉めた
ミとファ
シとドの間に
黒鍵がない理由は
おそらく
その間に
幻想があるからだと
彼女は言う
泣いてなんかいないわ
翌朝
彼女の霧で満たされた旧市街の
あちらこちらに
注意深くこしらえた
さりげなさをまとった
甘い匂いの黒鍵が落ちていたが
夫婦の幻想、春の幻想、指輪の幻想、若さの幻想……
言い換えれば
おとぎばなしのたぐい
旅人が出立する頃には
ゆるみ
それらはみな
野良猫が食べてしまっていて
現実という石畳だけが
おひさまに照らされていた
とてもすがすがしく
まったくこの街の猫ときたら そりゃあもうまるまると太っているのよ!
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「詩人サークル 群青」課題作品