蛙の快楽
……とある蛙


ほんの数十年前
空がピンク色に染まった夜の日々
凜として生きていた正義の味方

正義の味方は美しく
正義の味方は気高く
正義の味方は清々しく

誰から後ろ指をさされることもなく

騒々しく
自信満々に
平安の昔と変わらず
ゲコゲコ
ゲコゲコ
鳴いていた

ほんの数年前
空が灰色に落下する夜の日々
誰もが自称正義の味方

正義の味方は萎れていて
正義の味方は廃れていて
正義の味方はみすぼらしく

誰も振り向くこともなく

白い腹を見せて

息も絶え絶え井戸の中
ぷかりぷかり井戸の中
這い上がろうにも井戸の中

苔に覆われた壁面は
蛙の指さえ滑らせた
現実の世界の息苦しさに

蛙はまたも井戸の中へ

ぷかりぷかり井戸の中へ


自由詩 蛙の快楽 Copyright ……とある蛙 2014-02-04 11:54:16
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