スイセン
藤原絵理子


真夜中にピッチの着信音
どんな目覚ましよりも効果がある
気がつくと白衣を引っ掛け
廊下を小走りに駆けている

おとなしい茶色い目の
奥さんを思い浮かべる
父親に似て意志の強そうな
息子さんを思い浮かべる

動き回る看護師の
いかにも生きて在る所作の連続
花瓶からほのかなスイセンの香り

‘できるだけのことはやった’
無力感が支配する前につぶやく
最善を尽くして 彼を苦しめた


自由詩 スイセン Copyright 藤原絵理子 2014-02-03 21:28:05
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