春日線香

遠くから冷たい風が吹いてきて
ぺろりと剥げた顔が排水口に吸いこまれた
あわてて手を突っこんでももう遅い
その日から鏡もガラスもすっかり曇ってしまい
自分の顔というものがわからなくなった
写真を見返してもぼんやりとして
拭われたような暗闇が残されている
そのうち新しいのが生えてくるよと笑う友人も
ふとした瞬間に眉をひそめている
やはり取り返しのつかないことなのだと思う
なんといっても遺影に使う顔もないなんて
そんなものは豆腐と同じではないか


自由詩Copyright 春日線香 2014-02-03 19:33:08
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