都会のタンポポ
AB(なかほど)
誰も彼もが遥かな野望を抱いて
自分の道を進む訳でもないのに
「最終講義」をされる先生方はみな
立派な「哲学」を持ち
その専門分野に
どんな斬新な風を吹き込み
どんな魅力的な成果を残したのか
朗々とおっしゃる
日頃の講義からは想像もつかない
そして
全ての人に感謝を込めて
好きな道、決めた道を歩んでこれた
その素晴らしさを伝えて
最終講義は終わる
私もそろそろ
最終講義のシナリオを考える頃だろうか
地方の大学の助手に呼ばれて
もう三十年以上も農芸を教えてきて
おかげさまであと数年で定年となる
泥縄状態で
てんやわんやの毎日の仕事を片付けていたら
いつのまにか教授なんて呼ばれているが
「哲学」といえるものなんぞ
あったのか
と
振り返ることさえも億劫である
「さてさて
私がこの農芸化学の道を歩いてこれたのは
花屋のエミちゃんが好きだったからです。」
正直にゃ 語れないな
「それはまるでタンポポのような、」