歌 4
岡部淳太郎

人ひとり
やっと通れる狭い森の道で
ひらひらと
枯葉が舞っている
ひらひらと
枯葉が落ちている

冷たくなり始めた風に押し流されて
ひらひらと
枯葉が舞うのは当然のこと
ひらひらと
枯葉が落ちるのは当然のこと
夕焼けの
遠くの赤をかすむ目で見つめる
夕暮れの
街の灯りがともり始める頃
冷たくなり始めた風にその身が押し流される

人ひとり
やっと通れる暗い心の道で
ひらひらと
枯葉が舞っている
ひらひらと
枯葉が落ちている

すべての落下を受け止める
大きな掌のことも思い浮かばず
小さな足で狭い道を歩く
ひらひらと
舞いなさい
ひらひらと
落ちなさい
その身も心も
枯葉のように軽いのならば

人ひとり
やっと通れる狭い森の道で
ひらひらと
舞いながら
ひらひらと
落ちながら

いまここに
狭すぎる憂愁に閉じこめられた
人ひとり



(秋の歌)


自由詩 歌 4 Copyright 岡部淳太郎 2005-01-15 22:30:11
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