転校生
左屋百色
近くに鉄塔がある。
中2病をこじらせたひとさし指が液晶にふ
れる。ほぼ同時に鉄塔から飛び降り自殺す
る現代詩。見てた。砕け散る言葉。耳をす
ませば耳がちぎれる。中2病の耳に念仏。
唱える。中1男子は白く濁る。青くも赤く
もなれない。車輪の音。響く。窓際の中3
女子は残響少女。鉄塔の下で録音している
。あの音が液晶にはね返る。スカート汚れ
る。中3男子は何考えてるのかわかんない
。駐輪場に並んだ自転車がバケモノに見え
る中1女子は転校生。宇宙からでた血につ
いて考えても考えてもこじらせない。教室
の中に森をつくり風の歌を聴く中2病は森
の一番しずかな場所へ転校生を連れて行き
そこで宇宙からでた血をはじめて見た。鉄
塔へかけあがり上から吐き出す散文。転校
生。見てた。中1女子の液晶は割れても血
がでないけれど耳をすませば耳がちぎれる
。情報がもれる。ほら。もう。やわらかい
。しぼんでゆく鉄塔。白く濁った現代詩。
のみこんだ中1女子は転校生。ひとさし指
と中指を宇宙に入れる。春を告げる雨が降
った日。森の中央に鉄塔を建てた。森はぬ
れている。鉄塔の上に見える夕陽は血まみ
れ。中2の舌より赤い、