独活(うど)と白湯(さゆ)
八布

いつもの店のいつもの席で
ちょうどよく酔ったその後で
独活の酢味噌和えという旬のものを
うすうす噛んで
うすうす僕は
ひっそりとニンゲンをやめるのだった


右の席からは仕事の話
左の席からは人生の話
がそれぞれ聞こえてきて
仕事と人生に挟まれてたべる独活は
霞のように淡くって
これではまるで仙人だ
仙人ならば俗世を離れて
親兄弟、友人恋人
コレクションから体重まで
すべて綺麗に捨て去って
雲の彼方に去らねばならぬと
うすうすと僕はニンゲンを
やめてみようとしたのだが
さてどうやってやめたものだか
その方法がついにわからず
お茶の代わりに白湯をもらって
それを一息に飲み干して
勘定を済ませて表に出ると
一月の冷たい風が
僕のニンゲンの顔に吹き付けたのだった


自由詩 独活(うど)と白湯(さゆ) Copyright 八布 2014-01-26 22:56:59
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