遠雷
壮佑


朝 目覚めたら
鳥の巣箱の中にいた
市会議員選挙の告示のニュースが
母屋の方から聴こえてくる
体を起こし 何となく上を向いて
首を伸ばしてお口をあんぐり
母がテントウムシを口移ししてきた
ちょっと翅が硬かったけど
次のアカイエカは乙な味だった
市民の血が混じっているからよ
あい変わらず場当たり的な行政だこと
お昼過ぎまで世間話をしていたら
父がミミズを咥えて帰って来た
食べると土壌の味がして
即効でドジョウになった
巣箱の穴からにょろりと出ると
ケンタッキー草の叢に落下
川まで蛇みたいにくねくね這って行き
ヘドロの床でトロトロお昼寝
土手の道を走る選挙カーの声で目覚めた
ジエチルパラチオン市民の皆さま
清き一票をおねがいします
ヤノネカイガラムシでございます
おねがいしまあす!
おねがいしまあす!
おねがいしまあす!
おねカイラがあいしムすまシ!
ヤノおねネカがいイガしまラムあす!
ジエきよチルきいパラっぴチオょ!
シねヤおノむネジラいあっパラまっぴ!
ヤいノガガガカガガガカガカす!
候補者が必死で叫んでいる
バカみたいに手を振っているから
バカみたいに手を振り返そう
しまった! 手が無いのだった
ああ バカみたい
頭を抱えようとして
しまった! 手が無いのだった
んあ〜バたバババかバが?……
選挙カーの声が小さくなって行く
山の稜線の遥か向こうで
遠雷が鳴っている





自由詩 遠雷 Copyright 壮佑 2014-01-24 19:32:03
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