さよならユートピア
笹子ゆら
どこに有るかも分からないのならば、もう探す意味もないのだ。言葉にしても定まらないユートピア。黄金郷。息を吐かせる暇もないような、ほとばしる輝き。どれももうきみには必要がないだろう。(つまるところは)そこにある死のようなものを私たちはかき集めて(いるような素振りで)何となく世界にあこがれながら生きている。行くはずも落ちるはずもない天国と地獄で、虚勢も虚構もようやく価値を持つのだ。私たちの持つ、永遠のような永遠でないような(それでもってすぐに掻き消えてしまいそうな)たまらない夢を転がしながら、そこに死を(終わりを)感じている。(つまらない)ときみは言った(そうだ、当たり前に、つまらなかった)。その泥のような海に攫われた輝きで心を孤独にして、もうどうしようもなく(喘ぎようもなく)終わりの見えないぬるま湯の中から出ることが出来ない人間のように、阿呆面をしながら、(せめてもう少し生きたい、と)つまらない妄想に耽っている。これが夢なら、何が良かったのか。しあわせだったのか。結実しない世界の真ん中で、きみはわたしと邂逅する(一瞬の永遠)。お互いに引き摺り合う底なし沼は、もう私たちの誰も知らない。泡も出ないその肉厚の黒に、飲み込まれて、静かに(すべてが)終わるのだ。(もう誰も、愛することはない)