花そそぐ花
木立 悟





手に手をとって
輪に輪を埋める
おまえの名前を
知るものは無い


水の容れものが配られる日
空は泡のようになり
少しだけ微笑み
上に上に去る


空が赤いときは
雪が降っている
雪が降っていなくとも
雪が 降っている


水の中央に
波は集まり
いつかひらくもののようにじっとしている


骨が熱く
身動きできない
空に映る 空の図面
誰かが空を
解こうとしている


赤は赤く白を呼び
指先で幾度も土を抑える
何も無い穴に流れ込むもの
蛾の羽の目を見つめかえす


ふたつのいたずらに雪が降り
迷路のなかに隔てられ
互いに互いを呼ぶ声が
空白のかたちに咲いてゆく


愛しさだけをそこに残し
声は何処かへいってしまう
降りつづく熱 手に消える色
おまえの名前を
知るものは無い


























自由詩 花そそぐ花 Copyright 木立 悟 2014-01-23 01:49:20
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