蝶の夢
人の形した生き物

乱雑な色彩に紛れた美しい蝶
鈴のように澄んだ歌声は皆を惹きつけた
キラキラとした鱗粉をまとい、
ゆらゆらと魅惑する舞を皆が愛した
幸福を囁き癒しを与える蝶もまた皆を愛した

そんな平和がぐらりと歪んだのは間もなくの事

国王が蝶の噂を耳にした
街に不穏の色が漂う
王の命を受けた兵士による蝶の捜索

気紛れな王はきっと飽きたら蝶を殺してしまう!

街の人々は蝶を隠し、守り、次第に追い詰められた
怯える蝶の肩を抱き皆は口々に別れの言葉を連ねた
兵士を欺き蝶を街の外へと連れ出し
砂漠へと解き放つ
僅かな食料と水を持たせて
幸せであるようにと祈った

一人街を出た蝶は嘆いた
行く宛もなく彷徨う内に食料は尽き水も失い
愛し愛された平和を恋しく思う
ふらりと視界が揺れた時
どこからか穏やかな声を聞いた
疲れた身体に安らぎと潤いを与える優しい声を

後に街から兵士は姿を消し
捜索は打ち切られた
人々は安堵し蝶を思い泣いた

旅の男が蝶を見掛けたのだという

砂漠の中心に位置するオアシスで
蝶は眠りについたのだ
鮮やかな草花に包まれ
ゆったりと揺蕩う水辺で
いつしか美しい花になるだろう




他サイトより引用※自作


自由詩 蝶の夢 Copyright 人の形した生き物 2014-01-22 15:53:25
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