雪と車
砂木

駐車場にやっとたどりつき車を止める
前が見えないほどの雪が降る朝
ライトをつけての通勤
白い雪の中に ぼんやりと光が見える

そういえば昔に ライトを消し忘れて
車のバッテリーをあげた事があった
残業を終えてエンジンをかけようとしたら
なんの反応もない
実家の父や 夫や義父に電話し助けてもらった
若かった私 生きていた父 かけつけてくれた
父さん 

駐車場には 出勤してきた車が増え
ワイパーをあげて 積雪に備える
朝早くに除雪車がきたのだろう
車を降りて歩くと もう長靴が雪に埋まる

父の骨の白さも雪のようだった
暖かくしなければ守れない肉体の中の
焼いても焼け残る骨だけが今は この世の父と同じ姿

しゃべれないしゃれこうべ 肉にくるまって
溶けゆく雪の季節を通る
ケタケタ カタカタ ノコノコ クスクス

玄関で防寒着の雪を払い 長靴の雪を落し
今日の仕事を思い出し ロッカーに向かう
廊下には 人の声

雪に 覆われていく車のライトは
ちゃんと消した 忘れてないよ
息で 両手を暖め 仕事場へ入る



自由詩 雪と車 Copyright 砂木 2014-01-21 23:15:24
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