夜と街
木立 悟





偽の景を踏み こだまする
冬の波
なかば壊れ 凍る波
蒼のなかの緋の拍手


一から来る黒
黒から降る羽
黒い水面に
落ちる黒滴


ゆらゆらと底に立つ柱
灯のかけらの蝶や鳥
孕んでは浮き 産んでは沈み
はばたきの波を繰りかえす


岐路を吹く風
花に隠れ
花より重い
音に染まる


曲がり角を覆う
網の目の弦
泣きはらした目の
径を鳴らす


手のひらの黒
虹に去り
片目の上の
髪に帰る


右も左も遠く離れ
樹々に散らばる音だけが明るい
七度めぐり 人は居らず
月はふたつ 空に 径に


氷の上の景は砕け
油の足跡がつづきゆく
かけらは咲き 波は静まり
音の花 音の羽
消えた灯のまわりにかがやいている



























自由詩 夜と街 Copyright 木立 悟 2014-01-17 00:31:02
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