かの幻が開いてその影はきえた(一〇)
信天翁

         改装をくりかえして
      築四〇年余は建付けの歪み
 隙間風が折角の暖房部屋に吹き込んで
基礎代謝低下のおいぼれは震えるばかり

      まるで片田舎に建っている
      無人駅の待合室そっくりだ
 北風が皮肉なドラ声を突き刺してくる
 冬陽は意味ありげな囁きを流してくる

     そして庭木だげが震えている
     おらの真似して 裸になって
 小春日和ょ いつ来てくれるんか と
     あぁ 幻影は開いて 消えた


自由詩 かの幻が開いてその影はきえた(一〇) Copyright 信天翁 2014-01-12 10:45:33
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