費やした時間の重さ
ベンジャミン
3DKの家から
1トン車1杯分のゴミを運び出した
できるだけ静かに運ぼうとしたのに
荷台の上で何かが崩れ落ちる音がする
7年前の秋
そこで始まった生活が思い出せない
ゴミ袋に放り込まれたいろいろが
声も出せずに怯えているのを見て
おまえらのせいではないと思った
運んでも運んでも
抱え込んだ年月があふれてくる
何度も倒れそうになり
そのたびに左手を見つめた
2階の寝室には
布団にくるまったまま
息を殺している人がいる
自分にはもう
優しさなどないと思った
数日前まで入院していた体以上に
すりへった薄い感情
ペットボトルで透かしたような景色も
現実を麻痺させる
息を荒げて
渾身の力でトラックに放り込む
なぜかときおり手が止まり
色をなくした景色に
透明があふれた
それを必至に打ち消しながら
手に掴んだ感触だけを頼りにして
積み上げられた荷物と対称的に
沈み込む荷台とタイヤ
それが
費やした時間の重さなのか
そうか
そんなものだったのか
たったこれっぽっち
たったそれだけを積んで
運び去るトラック
窓越しに犬が吠え
網戸にもたれて猫が見おくる
かけてやる言葉もない
2階のカーテンが揺れていた
2度と開けることのない扉を閉めたとき
パタンと
空っぽな音がした
費やした時間などまるでなかったかのような
軽い軽い音だった