桃色の港
白雨

薄暗き桃色の港は
始まりやらぬ無知なる港
今日に微笑む幼女のように
朝に涼しい風を聴く
天より柔らかく声が溢れ
テラスにて
紅茶の葉擦れに触覚する
なによりも繊細に
なによりもおとなしく
つんとすました軽やかな気取りで
幼女が石の階段をそっと登りゆく

そのさきの労働よ
そのさきの人間疎外よ
軽やかなる気取り足取りは
重機の唸りに巻き込まれつつ
ゆっくりと沈滞し
海の底へと沈められゆく
港のグレーは軍艦のグレーなり
力と憂鬱のグレーなり

薄暗き桃色の港
無知なる不安ゆえ薄暗く
微笑む幼女のごとく桃色で
ああ、それは早朝の幻覚なり



自由詩 桃色の港 Copyright 白雨 2014-01-10 14:43:58
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