新聞紙
そらの珊瑚

焼き芋の包まれている新聞紙かすかなインクの匂いも食す

くくられた新聞紙の椅子の上あごひげという名の猫がくつろぐ

ちぎられて水にひたさればらまかまれほこりにまみれて新聞紙逝く

世の中の人生相談読みながら幸せ感じるあたしの小ささ

夜汽車では新聞紙をしきつめてよりそって寝るみんな旅人

夕刊が届く頃には花びらの落ちてふたひら夕闇の海

朝刊とちゃぶ台、茶柱と湯気、納豆の糸、葱は刻まれ

ねえ、あたし、ドレスにだってなれるのに、じいさんの爪受け止めている

妹は森に還っていきましたとても風の強く吹く日に

ゆっくりと切り裂いてゆく断面に女の細い悲鳴が生まれる

明日にはnewsの価値がなくなってあたしの命はひどく短い


短歌 新聞紙 Copyright そらの珊瑚 2014-01-10 08:46:13
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