冬のオルガン
keigo


西陽射す放課後の第二音楽室
古びたオルガンが
窓際に押しやられ
やがて来る
粗大ゴミの日を待つ

かつてはだれかしら触れていた鍵盤にも
今ではホコリがかぶり
ただポツンと置かれた佇まいは
哀しみを抱いているようにも
満足げに余生を楽しんでいるようにも見える
それはあるいは
私の気持ちの投影かもしれない

時から時へと
あなたはどれだけの生徒をみて
どれだけの笑顔と
どれだけの涙を運んだのか

ただそこに居るだけで
人が集まるのは
あなたの役得かもしれないが
例えばこの放課後みたいに
同じだけの寂しさも
知っているのだろう?

私はあなたに片思いをしていたから
春を迎えられない
この冬限りのあなたを
見送りたいと思う

ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、
シ、

でなくなったはずの
「ラ」
の音が
私の胸の中で
微かに響いた気がした




自由詩 冬のオルガン Copyright keigo 2014-01-07 08:34:29
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