四行連詩 独吟 <界>の巻
塔野夏子
*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目の語か句をとり、その語か句を、自作四行詩の第一行目に入れること。
(この1か2の規則を守って連詩がつづけられる場合、最初にえらばれた鍵となる語か句が再び用いられた場合、連詩が一回りしたとみなして、終結とし、その連詩の一回りの題名とすることができる)
僕らは世界を蝕んでゆく
世界は僕らを蝕んでゆく
蝕み合うその境界が時にひどく美しくて
僕らはしばし息を呑むのだ
*
窓から滲み入る
緑を帯びた初夏の闇
思惟と夢との界面で
青い矢車菊が咲く
*
青い扉を開くと君がいる
無邪気に透明に微笑っている
おなじようにはもう微笑えない私は
思わず少し目を伏せてしまう
*
長い時をかけて空に溜まりつづけた
数知れぬ沈黙のもとで
今 違う風が吹きはじめようとしている
誰のものでもない旗を はためかす風が
*
六月の午前四時
蒼く飛び交う精霊たち
夢がゆるやかに終わる気配
アガパンサスの蕾の傾き
*
窓に傾く月光
椅子たちの規則ただしい呼吸
片隅に白く静まる
菱苦土石の欠片
そのうえに
凝るちいさなひとつの願い
*
少年という結界が
少しずつ解けていることにまだ気づかず
その面差しは白く
遠い夜明けを見つめている
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