明け惑い
小林螢太
手渡しされた新しい年は
少し
湿り気を帯びていて
私の砂時計は
サラサラと流れていかない
古い年に取り残されたものたちが
色を失い
塵、となって積もっては
風に吹かれて
冬空に溶けていく
どうしようもない
ものたちは
どうにもならないまま
涙滴のかたちに溢れて
キッチンの水桶は満たされてゆく
*
川土手の砂利道を歩めば
もう、そこかしこに
いのちの息吹きが見て取れるのに
その熱が
感じられない
見上げれば
渡り鳥が列をなして飛んでいる
その行く先に
なにが待ち受けているのか
だれも知らない
道が分かれる
立ち止まる
次の一歩がでないまま
また、空を見上げる
雲が覆い、青が見えない
春は
まだ遠い