ほんとうの魔法使い
栗山透

"きみのせなかについているそのまっしろなはねで
おおぞらをとびまわってせかいをしあわせにしてよ"

朝、台風の風で道路に転がったごみ箱を
邪魔にならない場所へ移動させる君の姿を
僕は自分の部屋のカーテンの隙間から見ていた

思わず叫んだ
「魔法を使ってごみ箱を消せばいいじゃないか!」
母親が大きな声でなにか僕に注意した
どうして、君は手を汚した?

午後、
みずいろの
インクのペンで
君の名前を
紙に何度も書いた
何度も、何度も、何度も

紙は薄くちぎれて段々とみずいろに変わり
やがて、空になった

僕に空を見せてくれる
君は魔法使い

夜、
僕は部屋のカーテンを閉める
眠る前に本を読む

"そらをとばない まほうつかい"

その魔法使いは歩いてまわれる範囲の人だけを助ける
髪はきらきらひかる金色でまんまるの顔をしている

僕は思わず笑ってしまう
この本を書いた人は見たことがないのだ
ほんとうの魔法使いを


自由詩 ほんとうの魔法使い Copyright 栗山透 2014-01-04 02:17:03
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