はざま うつわ
木立 悟
鉄の響き
小さな双つ
朝の川岸 曇と廃城
丘に散らばる 無数の楽器
鏡を持ち
水のそばに立つかたち
姿も鏡も
映らぬかたち
陽は中州に落ち
樹々を消し
光は倒れ
野にそそがれる
天にも地にも
蛇の冬が来て
銀と鉛の赤と白
双子の幽霊を着飾ってゆく
風は風を剥がしては振り
くちびるは触れるばかりで空を喰まず
森は白い血の管の網
色は戻り戻らぬ波の手首
発つ場所さえ
着く場所さえ消え去っても
行き交うものは
行き交うことをやめはしない
展翅台によこたわり
息はじっとゆらいでいる
冬は高く双つを持ち上げ
もうひとつの冬を見せてゆく