味噌漬けと詩集
夏美かをる
今年も届いた母からの小包
まずは
?AKB48みたいな洋服がほしい?
という娘達のリクエストに応え
母が見つくろってくれた
チェックのワンピースやミニスカート
その下には
ハローキティの柄のついたトイレットペーパーが4つ
更に
おせんべい、和菓子、ほんだし、かつおぶし、昆布、ふりかけ、お茶
そして私の大好物の大根の味噌漬け
中ほどには品質のよい日本の下着がいっぱい
子供用のパンツも入っている
『お母さん、こちらには子供用でもハイレグのビキニみたいのしか
売ってないんだよ』と私が話したことを覚えていてくれた
あったかそうなババシャツをめくると
折り紙とハローキティのノート二冊
丁重に包まれて
一番底に収められていたのは
鮮やかな瑠璃色のカバーを纏った冊子
私が頼んでおいたもの
旦那は?You don't have to come.?と言って
子供達を連れ、自分の家族に会いに行った
私は大根の味噌漬けをお茶漬けにして食べながら
その良質の詩集をひも解く
娘達が生まれて、もう故郷には戻らない覚悟をし、
色々なことを諦めてきて…
十四回目のクリスマスイブに辿り着いた
味噌漬けの素朴な味と
美しい日本語で彩られた珠玉の連なり
娘達は異国の言葉をより流朝に話し
夫は私の国の文化に関心を示そうとしない
この家の中でも 外でも 日本人は私だけ
だけど私は日本人を辞められない
はるばる海を渡って来た
ひとかけらの味噌漬けと一冊の詩集が
こんなにも優しく私のDNAを慰めてくれる限り
添えられていた手紙には
『私も体があちこち弱ってきたけど、なんとか一人で暮らしています。
どうか、アメリカで幸せになって下さい。それだけが私の願いです。』
と筆ペンで大きく書かれていた