ひとつ ひとり
木立 悟
空気のかけらが
蜘蛛と遊ぶ
羽根のむこうの星
巨きな双つの白い影
空から地を見つめつづける
花がひたいに触れ
夜と話す
窓と壁は消え
ひたいだけが熱い
遠い場所にある目が
見つめ返す
滴が海になる時間を
見つめつづける
緑を残し こがねを残し
触れては消えてゆく花に
影は廻り
色の音を果つ
やわらかなものに囲まれ
白と灰と銀はある
黒い結晶を映す鏡
何も持たぬ夜の鏡
昏さも暗さも水に入り
光の波のなか じっとしている
触れるには遠く
囁くには近く
狩るものも狩られるものも
姿のないまま眠りにつく
羽根のむこうの星
花のようにそよいでいる
光と霧が 同時にあり
どちらとも言えぬものにかがやき
帰る場所の失いものの帰り径を
どこまでもどこまでも照らしつづける