還暦の感懐
……とある蛙

手の平を見つめる

指の間から零れるものは
幸福の粒と
不幸の砂
選ることもなく
一緒に零れ落ちる

頭上から降るものは光
雲に閉ざされた陰も降る
選ることもなく
一緒に降り注ぐ

また、
手で掬ってみる

手で掬っても
指の間から零れ落ちる
希望の粒と
後悔の砂
選ることもなく
一緒に零れ落ちる

頭上から降るものは未来
足下に溜まるものは過去
過去は粘りがあり
足下を絡め取る

足が地面に付着し
立ち竦む自己(おのれ)一人

時間の地層に
腕を突っ込むが
握れることが出来るものは魂一つ
抱きしめることが出来るものは身体
自己(おのれ)の身体一つ

延々と続く自己(おのれ)の係累と
蜘蛛の巣のような時間に
絡め取られて前のめり

一歩歩く
また、一歩


自由詩 還暦の感懐 Copyright ……とある蛙 2013-12-25 14:10:24
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