十一月のノートから2 (十首)
もっぷ
西向いてテディと布団にもぐる夜その方角に父の墓あり
三十分電車にまかせ揺られれば宙は星星ケチらないのに
父さんの部屋の片づけしていればあれもこれもみな形見ばかり
渋谷駅ハチ公のしっぽ握って待った待たせ上手の君はいまどこ
黄色い樹から離れる瞬間を確かめられた葉っぱ一枚
いままさに文字を書いてた君のペン形見に変えた電話一本
命とか尊厳とかをわたしたち毎日食べたり踏んでるんだよ
父さんののこした願いかなえたい笑顔を忘れず日日を、それだけ
あと三円あればカキフライを一個買えた食卓きょうは一汁
寒い日にはだかのテディ抱きしめて布団にもぐるやや暖まる