サナギ
加藤

一言が大きく響く
一人 夜中にソファーの上にいる
テレビの光と そこにいる人の影
どちらが温かいのか知っているのに
理由もなく大事な助言をさえぎってしまう

気がついて我に返ると
始めて聞かないでいたことを知る
どんなに近くても どんなに遠くても同じなのか
くだらない嘘をついて またテレビの光をぼうっと見つめた
好きだと思う気持ちも 大切に思う気持ちも 素通りしてぼんやり見ていた

気持ちと表情と行動はいつもどこか食い違う
ずっと近くにいても どんな時をどう思い過ごしたか
分からないことがたくさんある

夜は続いている
この暗がりを通り抜けるまで
温かい優しさのうしろに怖々つかまり 弱虫でいる
今を後悔する時がくる前に 早いうちに旅立つ準備がいる


自由詩 サナギ Copyright 加藤 2013-12-25 05:35:02
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