風の名前
星☆風馬

風が吹いている
名前を決めてよ、この風の名前
肌に触れる
さわってくる
君の名前が知りたい
声はいつ届くだろうか

日々は月日をまたいで過ぎ
明るすぎる日光は物干しにぶら下がったベージュ色のパンティーを乾かしている
あれがボクがあこがれた泉さんのパンティーだったかどうかはわからない
(もしかしたら妹のかもしれないし母親のかもしれないのだから)
妹の奈津美とは同じクラスだけどこんなガキとは御免だよ

かたつむりは膜を張ったまま干からびている
ヒョロリー、ヒョロリー
(これはかたつむりが言っているのだが、でん、でん、でん
でん、でん、 
でんでん虫がヒョロリー、ヒョローリと雨を呼んでいるのだ)
雨よ、恵みよ
今日はムシムシするね、と泉さんは言った
「でんでん虫が雨を呼んでるからですよ」とは言えなかった

アジサイが雨に打ち続けられて濃さを増していく時期
花の色はアオから色づき甘いむらさきの芳香をかもし出しはじめる
泉さん、もう我慢できません
告白してもいいですか
(ボクはただセックスしたいだけなんだろうか)
泉さんの裸ばかり想像してしまう
その肌や唇に触れるなら…
ボクというこの自己ゲンメツは泉さんまで共犯者にしようとしている
貧しい幻覚が次々に現れ泉さんを辱めはじめる
これは長く垂れ下がったヘチマが日光のシャワーを浴びてますますでかくなっていくのと同じだ
肌に触れ、さわってくる
君の名前が分かるならボクはほんとうの風になれるんだろうか
風、空(そら)、エートス(どれも違う)
柔らかく微笑んでみても届かないところにある
この、風の名前が知りたい


自由詩 風の名前 Copyright 星☆風馬 2013-12-22 10:21:29
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