試練を生きてこそ道は開ける
桜 歩美

試練というものを神様が私に与えてくださったのだとしたら

私は何としても最後まで笑顔を絶やさずに生きていかねばならぬ

最大の試練はとっくに乗り越えたと思っていたのだが

それでもまだ試練は残っている模様

子供が一人前になるまでいや大人になっても私が先立っても

私の試練は死んでも終わらないのかも知れない

試練のために生まれた運命だとしても

決して辛いとは思わない

だって生きて来たことに悔いはないから



私には絶望の中でもいつも希望があった

私が絶望の淵に立つとき支えてくれた人が在った

それは一人ではなかった

いろいろな場面でいろいろな場所で

私の心を支え続けてくれた

それは今でもだ

人は決して一人では生きていけない

少なくとも私は一人では生きられない

弱虫な生き物だ



一番の困難に陥った時助けてくれた人

生涯にわたって恩返しをするべき人

そして私に愛すべき息子を授けてくださった人に

心から感謝しながら生きている

でも私のことを支えてくれたのはそれだけじゃなくて

もっと他の周りに生活している人々の中にも

たくさんいた

私のために心を尽くしてくれた人が何人もいた

本当に感謝してもしきれぬ

きっとその時ご自分もお辛い中にあっただろうと思うのに

それでも私のために言葉を探し与えてくれた

その言葉一つで前に進めた

愛すべきは友

愛すべきは支えてくれるすべての人々



試練を乗り越えられないならもう生きてはいられない

そう思って崖に片足突っ込んだこともあった

でも引き返して来たのはきっと息子に逢うためだったんだろう

私はあの引き返そうと思った瞬間から強く変わったのだと思う

私が生きていればそれでいい

そう言ってくれた人が一人ではなかった

生きてさえいればそれでいいんだと言ってくれた

まったくの他人なのに私にそう言ってくれた

生きていることが家族への恩返しになるのだと

教えてくれた



私はこれから残りの人生を感謝の人生で送りたい

私が辛かった時に支えてくれたすべての人へ

感謝の気持ちを捧げる毎日で満たしたい

ただありがとうと思うことしか出来ないけれど

でもありがとうと思う人生を息子に伝えていくことは

それほど悪いことではないと思うから

私のそんな残りの人生を見ながら

彼がどんなふうにこれから育っていくのかはわからないが

きっと彼は大丈夫

彼は弱かったけど強くなってきた

いつの間にかとても逞しくなってきた

だからきっと大丈夫

ちょっと遠くからの見守りしか出来ないが

必ず君のことを見ているよ



試練の人生を君ももし送ることになってしまっても

与えられた人生を生きていくことはそう悪くないっていうことを

すべて話そう

崖に片足突っ込みそうになっても

やっぱり人生諦めては駄目なんだと思ったあの日のことを話そう

誰かを思えば思いは帰ってくる

そういう些細な気持ちを大切にすることを忘れないでいれば

きっと道は開ける





自由詩 試練を生きてこそ道は開ける Copyright 桜 歩美 2013-12-17 21:51:19
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