桃源郷が砕けた夜に
茜井ことは
わたしを守ると言ったひとは
わたしに頼れと言ったひとは
みんなどこかへ消えてしまった
抱きかかえようとしても
大きすぎる赤ちゃんでは
腕が痺れて
泣き声だってうるさくて
とてもじゃないけど
あやせたものじゃないからと
甘やかして
甘やかして
わたしを赤ちゃんにまで
戻してしまったのは
あなたたちなのに
安堵しても
罪悪感なんて抱かないだろう
だから、くるしむのはいつも
置いていかれた側なのだ
大きすぎる赤ちゃんは
今夜もひとりで泣き喚く
母を持たない赤ちゃんほど
惨めな存在はないと
思い知りながら