宝物
殿岡秀秋

ぼくのこころに根をはって
大きくなった老木が
公園の散歩道をゆく

墨絵のような老木から
枝が生えて
格子状に柔らかく伸びて
その先に花が咲く
躑躅の紅い花
ハナミズキの白い花
菫の青い花
菖蒲の紫の花

老木はいつから
ぼくの殻をやぶって
花を咲かせるようになったのか

蜜を求めて
蜂が老木の枝に飛んでくる
紅い花から
蜜を吸ってでてきた蜂は
少年になって走りだす
老木に行先を
おしえようとしてふりかえり
若い芽が出始めた林の中に
勢いよくはいりこむ

木々の間を
影のようにすりぬけて
老木が追いかけてゆく
幻を視るために

ここだここだよ
はやくおいでよ
少年の歓声が聴こえる


自由詩 宝物 Copyright 殿岡秀秋 2013-12-15 06:23:14
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