マウス ワイド シャット
和田カマリ
ディスティニー・ホリックのあたし、遂に夢の仕事をゲットした。飛葉県は膜張にある、デスティニーランド内のホテル、着ぐるみカフェ・ジェフ=ビキーでビビーマウスの中に入っているのは・・・何を隠そうこのあたしなのだ。
ある日のブランチタイム、店内は珍しく暇。スーツを粋に着こなした、中年のゲスト様お一人しかいらっしゃらなかった。
うううん!人数なんか関係ない、全力のおもてなしで、カワイイをいっぱい振りまいて、ここデスティニーランドにしかないサービスを、存分に楽しんでいただかなきゃ。
「ウェルカム・ゲスト様!」
声の出せない私たち、身振り手振りでご挨拶。パンケーキを配っていると・・あれれ・・・お尻が変な・・妙な感じ。
「ええマジ?ちち・痴漢?こんなレストランで?」
だんだん激しくなるゲスト様(嫌、こんな奴、おっさんで十分)は、あたしのスカートの中に手を突っ込むと、フンフンしながら、お股を激しく摩擦しだした。
ええやないか、ええやないかビビー
「タスケテ ビキー!」
助けてもらう為に振り返った、その時のあのドブネズミの他人事のような腐った態度、ちょっとトラウマになって、一生忘れられない。
ビキーはステッキを振り振り、タップダンスを能天気に踊り続け、あたしのことは完全に無視。さてはこのおっさんに、お金でも握らされているのね?
ええやないかビビー、減るもんやなし
「減るわ!ボケ。」
ダメだ、渾身の怒りも声にならない。おまけにこのおっさん、息が腐い。分厚い被り物をしていても、空気穴からうんこみたいな口臭が漂って来て、とてもとても目に沁みる。
いきなり、自分のチャックに手を掛けると、DCブランドのズボンをボクサーパンツごと脱ぎ捨てた。この時代遅れのバブル豚野郎め!
おチンチンを風車のようにぶん回すと、あたしの毛むくじゃらの小股に、擦り付けてきて、強制的に素股を始めたの。
はあ〜ん
はあ〜ん
マミー!マミー!
あたしの被り物のビロードのような肌触りに、母の名を呼びながらオッさんは昇天寸前になっていた。お前はブルーベルベットのデニス=ホッパーか?
ふ〜ん
ふ〜ん
マミー!マミー!
オッさんよ一つだけ言わせてくれないか。あたしゃあんたのママじゃ〜な〜い。お前の母ちゃん、どんだけ毛深いねん!
ええやないか、ミミー
デイGも姫キャラ達も
皆やっとるんや~
「はあ?」
クリスマスとかハロウィーンとか
イヴェント毎にシンデルラ城の中で
派手にパーティしているんや
「はあ?」
お前ももっと、はっちゃけてみろや、なあミミーよ!
くされおやじが、何言ってんの?
はあ〜〜〜〜ん
その時、おっさんはピクッと痙攣し、白濁液を私のぬいぐるみにぶちまけた。しばらく放心した後、われに返ったおっさんは、セカンドバックの中から100万円の束をポンと、あたしのホカホカの小股に投げつけた。
取っとき、ビビー
ええ気持ちやったで
「はあ?」
ふと、ビキーを見ると大袈裟に手を動かし、100万円を貰っとけポーズを繰り返していた。まあ、あたしもお金は嫌いじゃなかったし、別に直に皮膚接触してた訳じゃなかったし・・・まあ良いかなって、ちょっと得した気分だった。
ビビー、また頼むよ?
わしはお前が一番好きやで!
デイGよりもずっとええ具合や
誉められて、ちょっと嬉しいあたしがいた。
こんどのクリスマスパーティには
ビビー
絶対来てくれよ
銭やったら、今日の5倍出すで!
なんちゅう楽な・・・ハイリターンなバイトなんだろう。これだからお金持ちって大好き!早くクリスマスにならないかな、今から待ち遠しくてたまらないの。