ペンキ
草野春心



  ペンキは塗られたばかりだった
  ずっと、夏のあいだじゅう
  きみはアイスクリームを食べにいった
  ぼろい車に乗って闇雲に海沿いをひた走った
  読まなくてもいい本を読んで 読むべき本を読まなかった
  やがて きみは ある人を好きになって
  それから それほど 好きではなくなった
  以前ほどは 向こう見ずな笑みを見せなくなり
  説明するのが面倒だから、というような
  けったいな前置きのような笑みを増やしていった
  わけがわからない
  きみの体のどこか一部分に
  そのペンキは ずっと、夏のあいだじゅう 塗られたばかりだったというのに
  馬鹿げているとは思わないのだろうか




自由詩 ペンキ Copyright 草野春心 2013-12-14 00:23:26
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