頬杖をついたら
まーつん

 頬杖をついたら
 鼻から、鉛筆が生えてきた

 ため息をついて
 窓越しに雨空
 眺めてる暇があったら
 詩の一つでも書きなさい、と

 僕の鼻毛が、
 ニョキニョキと太くなって
 2Bの鉛筆になった

 こりゃ、
 なんて幻覚だよと
 髪をかきむしったら

 机の上に
 降り積もるフケが
 不意に、光り輝いて
 一枚の紙になった

 何とも、
 汚らしい幻想だが
 2Bの鉛筆は、昔ながらの
 六角形の断面をした、
 ほっそりとした形

 白い紙の淵を撫でたら
 指に走る痛みに、舌打ちをした

 どうやら、本物らしい
 誰のかけた魔法か知らないが

 こうなりゃ、
 乗りかけた船だ
 一本仕上げてやろう…
 たとえば…

 頬杖をついたら、
 ポンと頭に花が咲く

 頬杖をついたら、
 頭の上に雲が湧く

 頬杖をついたら
 涙の蛇口が緩みだす

 頬杖をついたら
 口がニヤニヤ笑い出す

 頬杖をついたら
 足の指先が踊りだす

 頬杖をついたら
 両目がチカチカ光りだす

 頬杖をついたら
 想像のロケットに
 火が付いた

 机の脚から噴射して
 僕は椅子に座ったまま
 頬杖をついたまま

 机ごと屋根を突き破り
 空に向かって上昇し

 渡り鳥たちを仰天させ
 ジェット気流をかき乱し

 大気園を超えかけた辺りで
 惜しくもネタ切れ、燃料切れ

 ひっくり返って現実に
 墜落しかけた僕の悲鳴を
 聞きつけた星々が手を伸ばし

 出番待ちだった、三日月の
 顎の上に載せてくれた

 見守る星々を前にして
 僕は机にかじりつき

 ついに、ついに、
 ホンモノの詩を
 書き始めたが…

 そのクサい内容に
 三日月がクシャミをし
 僕は、夜空に投げ出され

 暗い大地に瞬く
 電光の海に落ちていき
 再び悲鳴を上げかけたら…

 …ハッと夢から目が覚めて、
 ズルッと、頬杖が外れた。




自由詩 頬杖をついたら Copyright まーつん 2013-12-13 20:35:50
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