鮫のための狂想曲
左屋百色

若葉が砂になるまで待つ季語
矢印と地雷ばかりの地図
365日うねり続ける言葉と髪
ケーブルに絡まり千切れた運命の糸
私のレントゲンに写る現代詩の影
精神が崩壊して的中させる針の先
カテーテルで注入する言葉の渦
ベッドの上から天井に撒き散らす星
夜空しか飛ばない鳥の羽根
目の前の過去を飲み干し美化
題名のない散文に対する批評と見栄
歩いても飛行機でも縮まらない距離
印象のない爪先につける流行の色
携帯から発信する約400の嘘
魔法が使えた5才の夏
使えなくなった7才の冬
未来の屋根が剥がれ落ちる町
鎖骨が折れて極彩色に輝く未詩
別々に動く身体と心と指
景色をひっくり返す水死体
君の詩を左脳以外で理解したい
コンビニ前で不意に出くわす闇
すべり台の上から見える鬼
匂いつき消しゴムをくれた君
机の上に白紙の辞書
遠くから聞こえてくる野球部のかけ声
黒板に三角定規を擦り付け奏でる音楽
舌の上では完成と未完成は同じ味

私は私の現代詩をメッタ斬る

嘆きの風に耳を切られ独白
こだまする盗作された口笛
心を五七五と切り分ける音律
一日中検索しても見つからない本音
窓の向こうで名前を浮き彫りにする黒煙
地下に埋まっている言葉の裏の歴史
感情移入できないオモチャの刃物
美しい草原に散らばる鉄の破片
それが錆びて紅茶になる夕方
懐中電灯で照らす3月の後半
罪と罰が逆になる瞬間

君は君の現代詩をメッタ斬れ

この胸の奥にある海で
鮫が次々と詩をくいちぎる現代、







自由詩 鮫のための狂想曲 Copyright 左屋百色 2013-12-09 14:52:21
notebook Home 戻る