明日へ
もっぷ
変わらずにいつもわからない明日
するりと訪れて気ままに去ってゆく
取り残される人間は生き遺したことが
あるような無いような無様さで
夕陽に細長い影を作らせる
昨日を思ってみるのはどうだい
囁くのはカシオのデジタル時計
思ったところで修正不可能な
水彩画の失敗作のようなものだよ
絵なんて描けないけど絵を喩えに
切り返す、悔しさも隠せずに
今日を歩いているはずの
その脚に多少とも信心を
すればよいのにとカシオは再び囁く
今日ってなんだろういつだって
今日じゃなかったのかい
カシオがターゲットを絞りはじめる
考えたくはない反芻したくはないことが
今日わたしにはありました
と口を閉ざして我慢は限界
カシオ黙れぶん投げてやろうか
心中でその作戦に熱意が起こる
変わらずにいつもわからないから
今日の傷跡も癒えないままに
わたしは明日へ行くのだろう
きっと生き遺すことも抱えきれず
持たされたかばんはぎゅうぎゅう詰め
わかっている
ねえカシオ
こっちからはじめてみた
ねえカシオやっぱり脚を信じる気が
少しだけだけど無くはないよ
ねえカシオ
今日だけは絶対許せないでも
もしかして明日なら
カモメが何か収穫を銜えて飛ぶように
何かを得て、軽くなるかも
ねえカシオ
必ず起こして決して止まらず必ずきっと
ちっぽけでちゃちな機械に何を
わたしは託したいのだろう
気がつけば右の手にしっかりと
ロシアンルーレットしようと
構えているピストルが
わたしを明日へと立たせていた
そのくらいの覚悟で再び