町の死
紀ノ川つかさ
最後の店が閉じ
町は死んだ
残された者達は
買い物をする術もない
やがて人も死んでいく
国会議事堂前で今日も汗を流す人々
天下の悪法を廃案にすべく集う人々
大勢の人々
悪法が国会を通過しても
なお肩を抱き合い
希望を失わぬ人々
明日もここに集い叫び声をあげよう
悪法がもたらす自由の喪失により
何人もの善良な市民が
不当に弾圧され拘束されるに違いない
そして死刑まで宣告されるに違いない
命を守るためにここに集い
声の限り叫ぼう
命を守るために
ここに集おう
産業が一局集中し
小さな町は次々死んでいく
貧しい者は自業自得だと
国には冷たく宣告された
食べる物は少ない
わずかな望みを胸にすがりついた腕を
やさしく振り払ってその人は言う
それはそれとして問題なのだが
今はそれどころではないのだ
恐るべき悪法ができようとしている
暗黒の時代の幕が開こうとしている
今からみんなのところに行くのだ
今からみんなのところに行って
声を上げるのだ
未来の命を守るために
未来の命を守るために
美しき連帯
美しき仲間
美しき群衆
美しきシュプレヒコール
そして美しき
ここが我が戦場
町が死に
動けぬ者が独り
部屋に残って
やがて消え
やがて忘れられる
町にはもう誰も来ない
今日も群衆が叫ぶ
汗を流して叫ぶ
命を守るために叫ぶ
力の限り叫ぶ