王の庭
草野春心



  貘の食べ残した悪い夢が
  きみの唇のまわりに散らかっている朝
  窓越しにみえる庭は 素晴らしく綺麗だ
  気丈な松の樹に 少しだけ雪がかぶさって
  玉砂利は少女のごとく濡れ わたしたちを手招いている
  けれどもきみは眉をひそめて べつのものに思いを巡らす
  顔の前で手を組み コーヒーカップのそばに心を置き
  なにかを探すように 目蓋の内側で瞳をぐるぐる動かしている
 
   
   その日も 王様は 土の中に埋まったままだった
   凍りついた裸の躯を ぴくりとも動かさず
   松の樹の下に黙々と息づいていた
   透明な兵隊たちが行進していく
   黒光りを湛えた機関銃ががちゃがちゃと笑っている
   きみはそのことに気づいている
   王様は土の中で それでも 僅かに輝いている
   あまねく朝は 彼のおとす影なのだ





自由詩 王の庭 Copyright 草野春心 2013-12-07 10:37:45
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