Seven Ways of Looking at a Train
中川達矢
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金曜日。今日を始発とするが、ハナキンは混雑する。いつでも降りていいはずだが、それは途中下車でしかない。各駅の手招き、誘惑。何とか踏ん張って、居場所を確保。荒川を越えれば、車内は美しくなる。水面に映る広告はぼやけながら眠っていた。お休みへの道。
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土曜日。電車に乗らなくても、レールを走る音が聞こえる。朝方、澄んだ空気に運ばれて、どこからか聞こえる足音。次第に砂埃と話し声で淀む空気にかき消される足音。けれど、無音の向こう側には、数多の足音が心地よいリズムを刻んでいるのが見える。
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日曜日。乗り換えを乗り換える。行きと帰りは違っていたい。そのために、足で回り道をする。後楽園から水道橋から神保町から淡路町から池袋から最寄りへ。電車に屈辱を浴びせた。だが本当の屈辱は、車中で響くお婆さんの叫び声「どきなよ」だった。お休みの目覚め。
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月曜日。肩を痛めて、電車への道を歩めず、お休みは続くが、それは一つのお休み。見えない数多の足音はきっと蠢いて、お休みの忘れ物の入れ物の家と家の間の道に響く幼い声。お休みの外では、いつも通り働いている電車がいるのだろう。
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火曜日。御無沙汰したいつもの電車。行きの左は帰りの右となることを覚え、左側通行。走るも歩くも徹底していつもの道。いつもの人と昼飯と授業と夕飯と校舎に、今日だけの落葉は雨に踏まれている。日が落ちれば、振り返り、左側通行で帰宅する。
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水曜日。ここまでお休みが続くことを不思議に思う。電車は今日もきっと走っている。数秒の狂いが命取りだ。電気ではなく、ガソリンで走る車で出かけて、裏切る。大栄橋で電車達を見下す。誰かがいるはずの場所はそこにはなくて、ここにいてよかったはずだ。
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木曜日。もはや仕方なさを伴っている。今日もまたいつもの時間にいつもの道を進む、慣性の法則で、電車と同じ速さで。行き来を繰り返し続け、今は行くなのか、来るなのか。朝は夜と、夜は朝と、入り混じって、金曜日が見えてくる。電車はいつも同じ顔をして歩いている。